小児の新型コロナウイルスワクチン接種について
日本小児科学会から新たな提言が出されました。
以前からの変更点は、<ワクチン接種を推奨する>と言うことです。
要点をまとめますと
<メリット>
・オミクロン株感染拡大により健康小児にも重症例、死亡例が報告されるようになってきたこと
特に季節性インフルエンザ同様脳炎・脳症の報告例が増えてきており、インフルエンザ流行期より発症頻度が高いこと。
・ワクチン接種の副反応である心筋炎の発病頻度よりコロナウイルス感染時の心筋炎発病の頻度は遥かに高くかつ重症であること。
・軽症という言葉に騙されないこと;40℃の発熱が5日間持続、咽頭痛が強度で1週間近く固形物が食べられない、嘔吐頻回や全身倦怠感強く水分摂取が不十分で脱水に陥った(場合によっては入院)、等などこれらはすべて医学的には軽症扱いとなります。コロナウイルス感染流行当初からの定義なので、酸素が必要(酸素飽和度94%未満)や人工呼吸器が必要でない患者さんはすべて軽症という扱いです。
現在流行のBA5株は従来のBA1に比べて小児でも症状が重い傾向にあります。特にワクチン未接種の患者さんは診察室でぐったりと言うケースがほとんどです(そのため検査前に陽性が予想されることがほとんどです)。
・現状、感染者のワクチン接種歴は当院の(小児の)データでは3:1で未接種者の方が多くなっています。症状が強いと自主療養できないことから病院受診するコロナ患者さんでワクチン未接種者が多いということはそれだけ未接種者の方が重症者が多いと推測されます。
・小児でのコロナウイルス感染症後遺症の報告が増えてきています。咳が長期間続く、全身倦怠感が酷い(登校不可能例も)、ブレインフォグ(頭にもやがかかり、思考停止する)、味覚・嗅覚が元に戻らない、などが代表的症状です。治療法もないためコロナウイルスに感染しない以外防ぐ方法はありません。
<デメリット>
・ワクチンの副反応;海外だけでなく日本のデータもかなりの数が集まってきました。特に小児では死亡につながるような重症の副反応の報告はありません。心筋炎が心配されましたがいずれも軽症で特に治療せず改善しています。上述しましたがコロナウイルス感染による心筋炎は小児でも報告があり、中に健康小児の死亡例も含まれています。また大人に比べて接種後の発熱等軽微な副反応も少ないようです。
*現在流行中のコロナウイルスは季節性インフルエンザの強毒版と考えるとわかりやすいと思います。インフルエンザも脳症や心筋炎を稀に起こしますが、その頻度や重症度は現在のコロナウイルスの方が数倍高いということです。インフルエンザとの最大の違いは、一部の患者さんに重大な後遺症を残すという点です。これを避けるにはコロナウイルスに感染しない以外方法はありません。感染予防の観点からもワクチンと感染対策の継続、この車の両輪が大事であると考えます。
日本小児科学会の関連ページです
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=451
最新記事
すべて表示新型コロナウイルスワクチンの追加接種が始まり、中には4回目、5回目接種となる方もいらっしゃいます。海外では感染予防の面で効果が少ないことからすでに追加接種を取りやめた国も少なからず存在します。それと共に気になるニュースや論文の発表が見られるようになりました。例えば現在主流のBA4の2価ワクチンを接種してもBA4特異的抗体はあまり上昇しない(初期のタイプに対する抗体は上昇する)、ワクチン接種者で帯状
小児感染症の専門医が小児のコロナウイルス感染に関して重大な懸念を表明しています。 オミクロン株の流行以降小児患者さんが増えていますが、1年の間に41人もの小児(半数は基礎疾患なし)が死亡するような流行性疾患を近年我々は経験していません。またブレインフォグや慢性疲労症候群、味覚・嗅覚障害などの後遺症を訴える小児が増えてきています。大部分が軽症だからと言って軽視してはいけません。現状では少なくともイン
第7波(オミクロン株)もピークアウトに向かい患者さんも減ってきました。今後は変異株により夏冬の流行を繰り返すことになると考えられます。これはかつて猛威を振るった強毒性のインフルエンザ(スペイン風邪)が次第に弱毒化して季節性インフルエンザに変化したのと同じような過程だと考えます。既にアメリカでは毎年1回変異株対応のためのワクチン接種を行う方針になりました。コロナウイルス治療薬の開発も進められているこ