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食物アレルギー

ときえだ小児科クリニック
ときえだ小児科クリニック

食物アレルギー(I型;即時型)について

食物アレルギー(I型;即時型)
I型(即時型)アレルギー反応について
ときえだ小児科クリニック アレルギー反応について

(食物アレルギー診療ガイドライン2021)

食物アレルギーの患者さんでは特定の食物にのみ反応する特異的IgE抗体が形質細胞(リンパ球の一種)から産生されます。このIgE抗体が全身に分布しているマスト細胞の表面にくっつきます。特定の食物(抗原)がマスト細胞に付着したIgEに結合するとマスト細胞内にある顆粒を外部に放出させます。この顆粒は化学伝達物質と言われ色々な臓器に働きかけて全身性の症状を起こします(上図)。マスト細胞は皮膚に多数存在しているため患者さんの80%で全身性の蕁麻疹を認めることが特徴です。症状が重症で意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックと言い緊急の治療を行わないと死亡する危険があります。

食物アレルギーの成立メカニズム
ときえだ小児科クリニック 食物アレルギーの成立メカニズム

J Allergy Clin Immunol. 2008 Jun;121(6):1331-6.より。一部改変

人は自己でない蛋白質を異物として認識しそれを排除する仕組み(免疫反応)があります。ただ唯一この仕組みが働かないのが食物蛋白質です。それは非自己蛋白質が腸管を経由して体内に侵入してきた場合に限り、免疫反応が作動しないように働くからです(免疫寛容)。
食物アレルギーでは口から食べ始める前に食物蛋白質が別のルート(主に皮膚からのルート)で体内に侵入するとこの免疫寛容のシステムが働かずに抗体(IgE)が産生されてしまいます。この状態でその食物を食べてしまうと食物アレルギーの症状が出てしまいます。

食物アレルギーの診断

食物抗原(アレルゲン)の基礎知識

ときえだ小児科クリニック  食物抗原(アレルゲン)の基礎知識

(食物アレルギー診療ガイドライン2021)

食物蛋白質は複数の蛋白質からできていますがアレルギー反応を起こす原因となる蛋白質をコンポーネントと言います。このコンポーネントには大きく分けて①連続性エピトープ構造を持つものと、より複雑な立体構造の②構造的エピトープに分けられます。食物を食べた時①はそのまま体内に吸収されるため容易にアレルギー反応を引き起こします。この代表が鶏卵のコンポーネントであるオボムコイドが該当します。鶏卵アレルギーでは加熱調理してもアレルギー反応が引き起こされるのはこの理由からです。②の代表が花粉症等の抗原です。花粉症の時期に患者さんは多くの花粉を食べていることになるわけですが花粉症患者さんがアナフィラキシー反応を起こすことはありません。②の抗原は消化酵素で構造が崩れると体内に入る時点でほとんど抗原性が消失しているために全身性のアレルギー反応が起こらないからです。花粉症の症状が胃を通過する前の症状(眼や鼻)である理由です。

  • 特異的IgE検査
    食物アレルギーの初期診断のための重要な検査です。ただし食物は多種類の蛋白質を含むため粗抗原ではなく実際にアレルギー反応を起こす蛋白質コンポーネントと言います)を測定する必要があります。さらに同じ食物中に①連続性エピト-プと②構造的エピトープを両方含むものがあり注意が必要です。例えばクルミのjug r1は①のエピトープなので全身性のアナフィラキシーを起こすリスクがありますが、jug r7は②のエピトープなので食べると口の中の違和感や痒みを生じますがアナフィラキシーのリスクはほとんどありません。このため原因蛋白質を診断するためには可能な限りコンポーネントに対する特異的IgEを検査する必要があります。
    後ほど記述しますが食べられるかどうかの経過観察のためIgEを測り続ける意味はほとんどないと思ってください。
     

  • プリックテスト
    コンポーネントが測定できない食物抗原に対しての診断に用いる有効な検査です。
     

  • 経口食物負荷試験(OFC)
    上記で診断できない場合行うことがあります。特に運動との組み合わせで症状が出る食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)では診断確定のための有用な検査になります。

食物アレルギーの治療

メカニズムのところの図で示したように食物アレルギーの患者さんではすでに体内に食物に対する特異的IgEが存在しています(この状態を感作と言います)。反応しない程度の少量の食物を経口で摂取継続することで人為的に免疫寛容を誘導するというのが現在の治療になります。

ときえだ小児科クリニック 食物経口負荷試験

食べ始めても特異的IgEが減少、消失するとは限りません。治療によって別な抗体であるIgG4が誘導されるとIgE付着のマスト細胞が脱顆粒しなくなることがわかってきました。このような状態では特異的IgEが陽性であるにもかかわらずその食物を食べることができる(耐性獲得と言います)ようになります。特異的IgEを測定し続けても食べられるようになっているかどうか判断できない、というのはこのためです。上記の治療図にある通り治療効果の判定は必ず食物経口負荷試験(OFC)で行います。

食物アレルギーの予防

乳児期早期の湿疹(特にアトピー性皮膚炎)を治療する
皮膚からの抗原侵入が食物アレルギーの原因であることからなるべく皮膚のバリア機能を修復することが大事になります。

離乳食を遅らせないこと
食べることで免疫寛容が誘導されることから食物アレルギーになりやすい身近にある食品ほど離乳食開始早期から始めることが推奨されています。
*注)離乳食の開始時期を早めるという意味ではありません。

食物アレルギー;その他のI型(IgE依存性)アレルギー疾患

食物アレルギー;その他のI型(IgE依存性)アレルギー疾患
食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)

原因食物を食べて数時間以内にアナフィラキシー症状が出現する疾患です。初回の発症年齢は10~20歳です。原因食物は小麦、甲殻類、果物が多く食べても運動を伴わなければ症状は出ません。

食物依存性運動誘発性アナフィラキシー
口腔アレルギー症候群(OAS)

原因食物摂取直後から1時間以内に唇、舌、喉などの痒みや刺激感が生じます。唇の腫れを伴うこともありますが全身の皮膚症状(蕁麻疹)を認めることは通常ありません。原因抗原は構造的エピトープなので消化管で分解され体内にはほとんど吸収されないためだと考えられています。

口腔アレルギー症候群
花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)

口腔アレルギー症候群の一つで、花粉の構造的エピトープと似た構造を持つエピトープを持つ食品を食べることでOASの症状(交差反応)が出ます。これを抗原類似性と呼びます。以下のような花粉と食品の関連性が知られています。花粉症になったことによる症状ですので学童期から成人にかけて多く見られる病気です。

ときえだ小児科クリニック 食物アレルギー
食物アレルギー;消化管アレルギー​ 食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)

近年増えてきた病気ですが、原因食物によって大きく2群に分けられます。

①非固形
以前新生児消化管アレルギーと言われていました。原因は人工乳(母乳の事もあり)で長期間の血便を伴う下痢症状が続き体重増加不良がみられます。乳抗原を除去した成分栄養剤での治療が必要となります。
 

②固形物
原因食物摂取後数時間以内に頻回の嘔吐や下痢症状が現れます。離乳食開始後に見られることが多く卵黄による報告が最多となっています(食物アレルギー予防のため早期から鶏卵を開始していることが関係している可能性があります)。
 

いずれも非IgE依存型の病気ですので通常特異的IgE検査で陰性となるため残念ながら食物アレルギーと認識されていないケースがあり注意が必要です。重症例では意識低下でプレショック状態となることがあります。

新生児消化管アレルギー

成人の食物アレルギーも診療しますので、お声掛けください。

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