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アトピー性皮膚炎

ときえだ小児科クリニック
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皮膚の炎症のメカニズム

ときえだ小児科クリニック  アトピー性皮膚炎

(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024)

アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚でどのような炎症が起こっているのか詳細にわかってきました。その主体として炎症性T型リンパ球や好酸球が重要な役割を果たしており様々な炎症性サイトカイン(IL-4,IL-13等)が関与する複雑な反応となっています。以前はステロイド外用薬しか有効な治療の選択肢がなかったアトピー性皮膚炎ですがこのメカニズムがわかってきたことで炎症性サイトカインをブロックする薬剤が次々と開発され治療の選択肢が増えています。

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治療薬<外用薬>

①ステロイド外用薬

アトピー性皮膚炎治療薬の中心的薬剤です。初めに強力に炎症を抑えて早く皮膚病変を改善することがまず重要です。次に改善しても皮下の病変は残っていることからすぐに治療を中断すると必ずリバウンドします。ゆっくり減量するのがポイントです。減量後も再燃防止のためプロアクティブ療法を行います。

ときえだ小児科クリニック プロアクティブ療法

(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024)

②タクロリムス(プロトピック)

ステロイド剤とは別なメカニズムで皮膚の炎症を抑制する薬で準主役級の役割を果たします。ステロイド剤と異なり強さの選択ができないこととびらんや潰瘍のある皮膚に使えないといった制約があります。

 

③デルゴシチニブ(コレクチム)

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で特にアトピー性皮膚炎の痒み抑制効果がある外用薬です。痒みの強い場合にステロイド剤などと併用します。

 

④ジファミラスト(モイゼルト)

ホスホジエステラーゼ(PDE)の選択的阻害薬です。作用はマイルドですが長期間の使用で効果を発揮する薬剤です。プロアクティブ療法中に保湿剤との併用でより長期の寛解(正常な皮膚状態)維持が可能との報告があります。

 

⑤非ステロイド性抗炎症薬(コンベック、スタデルム等)

抗炎症作用が弱く反面接触蕁麻疹(使用していると皮膚がかぶれる)を起こすことが多いことから現在、アトピー性皮膚炎治療には使われません。

 

⑥保湿剤

スキンケアーの基本となる薬剤です。炎症が収まっても継続が望ましいとされています。

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治療薬<経口薬>

①シクロスポリン

重症例で短期間使用するが小児適応はありません。


②経口JAK阻害薬

重症例で使用するが専門施設での使用に限られます。


③経口ステロイド薬

副作用が大きすぎるため基本使用されません。

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治療薬<生物学的製剤;注射薬>

①デュピルマブ(デユピクセント)

IL-4/IL-13に対するモノクローナル抗体です。生後6か月以上の重症アトピー性皮膚炎患者さんが対象です。著明な皮膚症状改善とステロイド外用剤減量効果が認められます。結膜炎以外の副作用は認められていません。


②ネモリズマブ(ミチーガ)

IL-31に対するモノクローナル抗体です。IL-31は痒みに関与するサイトカインなので痒みの改善効果には優れるものの皮膚症状の改善効果はデユピルマブには劣ります。


③トラロキヌマブ(アドトラーザ)

IL-13に対する抗体製剤ですが小児適応がありません。

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アトピー性皮膚炎の痒みについて

皮膚刺激が生じると炎症細胞から痒みの原因となる物質が放出され、それが感覚神経を介して脳に伝わり、<痒み>として知覚されます。蕁麻疹では肥満細胞から出されるヒスタミンが原因の大半なので抗ヒスタミン剤を内服することで症状が治まります。アトピー性皮膚炎では好酸球やリンパ球等の炎症細胞からも様々な痒み物質が放出されるためヒスタミンのみをブロックしても痒みが治まりません。これが、抗ヒスタミン薬の効きにくい理由です。

ときえだ小児科クリニック かゆみ
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痒み対策

痒みの悪循環を断ち切りましょう

まず、痒みの原因は皮膚の状態が良くない→掻く→さらに皮膚の状態が悪化する→痒みが強くなり更に掻く・・・という悪循環なので、これを断ち切ることです。 

簡単に言うと強力な治療で早く皮膚の状態を良くして痒くない状態に持っていくことです。

物理的対策

また、神経の痒みであることから、皮膚のタッピング法も効果があります。タッピング法とは痒みを感じた時に皮膚を掻くのではなく軽くリズミカルに叩く方法です。末梢神経(感覚)は同時に2つの異なる感覚刺激があった場合片方の刺激により強く反応します。人間にとって重要なのは 痛み>痒みなので、叩く刺激により痒み感覚が弱まることになります。

健全な皮膚を保つために

ときえだ小児科クリニック

アトピー性皮膚炎の患者さんが小児期から大人に持ち越すか否かの最大のポイントは、小児期に健康な皮膚に近づけるか否かにかかっています。

皮膚が健康な状態を保つ上で重要なのは発汗です。汗には皮膚の新陳代謝やバリアー機能など様々な機能を正常に保つ作用があります。汗をかく機能は汗腺という汗を分泌する器官の能力によるのですが、この汗腺の数は小学校位までに決まってしまいます。アトピー性皮膚炎の患者さんはもともと汗をかきにくい構造なのですがこれは汗腺の数が少ないことが原因です。汗をかくことにより汗腺の数は増えていきます。

健全に汗をかいて、汗をかいたらシャワーを浴びる(できない時は少なくとも下着を着替える)等の対策をしながら上手に皮膚を鍛えていきましょう。

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成人のアトピー性皮膚炎も診療しますので、お声掛けください。

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