小児コロナウイルスワクチンに対する考え方
第7波(オミクロン株)もピークアウトに向かい患者さんも減ってきました。今後は変異株により夏冬の流行を繰り返すことになると考えられます。これはかつて猛威を振るった強毒性のインフルエンザ(スペイン風邪)が次第に弱毒化して季節性インフルエンザに変化したのと同じような過程だと考えます。既にアメリカでは毎年1回変異株対応のためのワクチン接種を行う方針になりました。コロナウイルス治療薬の開発も進められていることから、タミフルのようにほぼインフルエンザ同様の病気と考えてよいかと思います。元々ウイルスは自らが生き残っていくためには感染した対象を殺さずに共存する道を目指す傾向があります(強毒性のMEAS(コロナウイルス)が早期に終息したのはこのためです)。第6波以降オミクロン株に変異してから多くの小児が感染しました。また海外からも小児の感染に関して多くの知見が寄せられいろいろなことがわかってきました。
ポイントとなる点を(インフルエンザと比較して)記してみました。
①基礎疾患のない健康小児も重症化、死亡(主に脳症、心筋炎)することがあり、その危険率は今のところインフルエンザの3倍程度と推測される。
②重症化、死亡した小児の多くはワクチン未接種であった。
③小児でも重症の後遺症(重度の疲労感、ブレインフォグ等)を訴える患者さんがいる点はインフルエンザとは異なる点であること。
④小児のコロナウイルスワクチンでは重症の副反応の報告は稀であること。
以上のようなことを踏まえて日本小児科学会等でも小児のコロナウイルスワクチンを推奨するという提言が出されました。
ワクチンによる免疫効果とメカニズムについて大まかに説明します。ワクチンによって体内には2つの免疫機序が誘導されます。1つは細胞性免疫と言われT型リンパ球やマクロファージ、NK細胞等直接的にウイルスをターゲットにしてウイルス不活化、排除の働きをします。もう1つは液性免疫と言われよく耳にする抗体と言われるものでウイルスに吸着することでウイルス排除の補助的役割を果たします。感染後時間と共に抗体は減少しますが細胞性免疫の一部は記憶細胞として1年以上残り続けます。感染防御の主体は抗体が果たしますが、重症化予防には細胞性免疫が重要とされていることからコロナウイルスのように変異株が出現すると抗体をすり抜けるため感染予防効果は落ちますが相手がコロナウイルスである限り細胞性免疫が残っているため重症化予防に効果があると考えられます。また後遺症の予防効果も細胞性免疫が主体なのでこの面でも有効と考えられます。インフルエンザやコロナウイルスのような変異型ウイルスに対しては実際に感染するよりもワクチン接種の方が免疫反応をしっかり確立すると言われています。つまりウイルスに対しての免疫力が<ゼロ>か<基礎免疫力>を持っているかがとても重要であるということです。<基礎免疫力>をつけることは健康小児にとっても重要であると考えます。
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