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お知らせ・ときえだ通信

ときえだ小児科クリニック お知らせ・ときえだ通信

新型コロナワクチンの小児接種適応を考える

現在使われているファイザー製、モデルナ製ワクチンの接種適応に<12歳以上~>が新たに追加されました。今後、中学生以上への接種勧奨が行われる可能性があることからこの問題を考えてみたいと思います。

<mRNAワクチンとはどういうもの?>

ファイザー製、モデルナ製ワクチン共にmRNAタイプの新しいワクチンです。コロナウイルスは遺伝情報を有するRNAという一本鎖のウイルスで人の細胞に感染するために特有の殻(タンパク質)に包まれています。この殻の表面に人の細胞にくっつくための特殊な突起を持っています。コロナウイルスは人の細胞内に侵入すると殻を脱ぎ捨てて自分の本体を複製して増えていきます。ところが殻を自力で複製できないため、人の細胞内にあるたんぱく質製造工場を乗っ取って自分の殻を作らせるのです。この自分のたんぱく質を作らせるための設計図がmRNAに相当します。

mRNAを使ったワクチンはこの設計図を特殊な脂質の膜につつんで注射するものです。mRNAはたんぱく質を作らせるとすぐに体内で壊れてしまいます。なのでmRNAワクチンは非常に不安定なことから低温保存が必要になっています。ウイルス本体(RNA)を使う(弱毒)生ワクチンや、殻(蛋白質)の一部を使う不活化ワクチンと全く異なるワクチンと言えます。


<mRNAワクチンの効果が高い理由>

mRNAによって作らされたウイルスの殻は人間にとって異物そのものです。そのため、この異物たんぱく質に対する体内の免疫反応が誘導されます。ウイルス本体(RNA)はいないにもかかわらず、感染した時と同じくらいにウイルスの殻が生み出されるためにかなり強力な免疫応答が起こると考えられます。通常の液性免疫(抗体産生)だけではなく細胞性免疫(貪食細胞やキラーT細胞等)や各種サイトカイン産生も誘導されるようで、この結果90%以上という極めて高い予防効果を発揮します。また今問題となっている変異株ですがこれは殻の表面にある突起が一部変異していることを言います。インフルエンザワクチンは殻の突起部のたんぱく質を注射する不活化ワクチンなので、これが変異すると効果がなくなります。ですから毎年の接種が必要となります。また流行期にもコロナウイルス同様変異していきますので「ワクチン打ったけど感染した」というケースは起こりうるわけです。

mRNAタイプのワクチンは殻全体に対する免疫応答なので、例えば10個の突起のうち2~3個変異しても残りに突起に対する免疫反応は残るためある程度の予防効果を発揮すると考えられています。


<mRNAワクチンの副反応>

・急性期;アナフィラキシー反応に代表されるI型アレルギー反応は誰にでも起こりうる反応で、どのワクチンでも頻度の違いはあっても必ず存在します。ただ<アレルギー>という言葉が紛らわしいため慢性的なアレルギー疾患(気管支喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎等)の患者さんでリスクが大きくなることはありません。ただ過去に薬や食物でアナフィラキシーショックを起こしたことがある方は注意が必要です。アナフィラキシー反応はその場で適切に対処すれば全く問題なく100%回復しますのでそれほど心配はいらないかと思います。従来のワクチンに比べ発熱する割合は高いといえます。発熱は体内の免疫応答なので、それだけ強力な免疫反応が誘導されているからだと考えられます。

・遅発型反応;まだ、はっきり解明されていません。事実としては血栓症、脳卒中、心筋梗塞等心血管系トラブルの報告が多いこと、明らかに女性に多いことがリスク要因と考えられています。


<mRNAワクチン副反応とコロナウイルス感染の特殊性の関連性>

ここから先は私の個人的な推測を含む考え方ととらえてください。

新型コロナウイルス感染症は単に肺炎を起こしてくるだけでなく全身性の血管炎を起こしてくるところにその特徴があります。脳をはじめとしてあらゆる臓器に血管炎を引き起こすため血栓症や循環器障害による嗅覚・味覚異常をきたすと考えられます。全身性の血管炎はコロナウイルス自体が引き起こしているのではなく、コロナウイルスに対する強力な免疫反応の結果であると考えられます。流行初期に若い人がサイトカインストームと言われる症状で多臓器がダメージを受けて亡くなったのはこのためです。今では病初期から、免疫反応を抑えるステロイド剤の大量投与を行うことで重症化を防げるようになりました。

mRNAワクチンは前述したように<疑似感染状況>を作り出しているため少なからず血管炎に似た症状が引き起こされる可能性は否定できないでしょう。女性ホルモンはある部分ステロイドホルモン同様の作用を持っています。性周期で女性ホルモンの分泌は変動するため、そのことが女性で副反応の率が高いことと関連しているのかもしれません。


<副反応に対する考え方>

「予防接種を受けて何人亡くなった」という報道がニュースに乗りますが注意しなくてはならないことがあります。例えば全国で高齢者は毎日何百人単位で亡くなっています。同年齢での比較で「打っていない人は○○人」「打った人は△△人」亡くなった。なので予防接種の副反応が疑われる、という記事でなければ信憑性はないのです。また「危険率は2倍!」といっても、例えば1/100000000が2/100000000になっても確率は2倍です(年末宝くじが今年は例年の10倍と言ったところで簡単には当たらないことをみなさんご存じですよね)。

実際にワクチンと関連性の疑われる重症の副反応は<飛行機事故にあうくらいの確率>と言えます。

全く安全なワクチンはありません。ですからあくまで<新型コロナウイルス>に感染したら自分はどれだけ<リスク>があるのか?それと<副反応>のリスクを比べて接種するかしないか、判断するしかないと考えます。


<ワクチン接種の目的>

もちろん最大の目的は疾患にかかった時の重症化のリスクを下げるために行うのですが、このようなパンデミックな状況では社会全体の感染を終息させるという目的もあります。集団の中で一定数の患者数と予防接種者数の合計がある程度の割合に達するとその集団での流行は終息に向かいます。これを集団免疫と言います。その数が大体集団の70%を超えるとこの効果が認められるようになりますが患者数だけでこの数までというとすごい数の重症者と死者を出すことになるため、予防接種が重要なカギとなるのです。

ほとんどの人がコロナ以前の普通の生活に戻りたいと思っているのであれば、その目的のために予防接種は必要だと考えます。


<小児のワクチン接種について>

小児でも重症化しやすい基礎疾患を持っている方は海外でもコロナ感染での重症化の報告があり、メリットが大きいと判断されたら積極的にすべきかと考えます。問題は健康な小児の方の接種をどう考えるかです。身近に重症化しやすい家族がいる場合や、基礎疾患でワクチン接種できない方がいる場合は接種を検討すべきでしょう(お孫さんが感染し祖父に移して祖父が亡くなったケースがありました。そのようなケースではお孫さんはずっと心の傷を背負っていかなくてはならないかもしれません)。

そのような状況でない健常者の場合、個人の重症化リスクはかなり低いため周囲の流行状況を見ながら判断されるべきかと思います。決して「接種すべき」というような強制圧力は慎むべきです。ただ学校現場での教職員の先生方は学校でのパンデミック防止のため優先的な接種をお願いしたいと思います。


<日本小児科学会からの提言>

日本小児科学会から<小児の新型コロナウイルスワクチンに関するコメント>が出ています。ご参照ください。






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